牡蠣が食えたら

#牡蠣食えば のサブブログにしました。

保坂和志の新刊が出る


 2016年10月、『遠い触覚』以来約1年ぶりとなる保坂和志の新刊『地鳴き、小鳥みたいな』『試行錯誤に漂う』の2冊が、講談社みすず書房からそれぞれ発売されることが6日わかった。(私が)

 『地鳴き、小鳥みたいな』は、群像2016年4月号に掲載された同名の小説を含む短編集らしいが詳細は不明。新潮2016年5月号掲載の『キース・リチャーズはすごい』は収録されるのだろうか、それとも出版社が違うからされないのか。

地鳴き、小鳥みたいな

地鳴き、小鳥みたいな


 『試行錯誤に漂う』は、みすず書房のPR誌「みすず」に連載されているエッセイをまとめたものと思われる。個人的にはこちらを是非読みたい。それからおそらくこの本とは関係ないけれど、別の雑誌でカフカの『城』について保坂和志が書いていたのがまだ途中だった気がするのであれの続きも読んでみたいからどこかで書いてくれないかなぁ・・・・・・

「僕はとにかく国語的にはだめでも、ちゃんとイメージを伝えたい」――書くこと、考えることの自由を体現する小説家の最新エッセイ。
近刊情報 : みすず書房

試行錯誤に漂う

試行錯誤に漂う


 また保坂和志のホームページによると新刊の発売にあわせて本日7日15時より講談社にてトークイベントが行われるらしい。こちらは既に満席となっているが、トークの模様は動画で後日配信される予定とのこと。

追記

カバーができたそうです

追記

10月7日のトークの様子がyoutubeにアップロードされました。
www.youtube.com

はてな題詠「短歌の目」第十一回9月

短歌の目第十一回9月お題です - はてな題詠「短歌の目」
お久しぶりです。2016年9月の日本からお送りします。


1. 星
期待した人が勝手につけてった星がどんどん奪われていく


2. 吹
吹くなその風は腐敗と発酵の境界も曖昧にするから


3. はちみつ(蜂蜜、ハチミツも可)
こんにちは1リットルのはちみつと交換したい妹の声


4. 川
葡萄虫握る掌川石斑魚ペットボトルの水槽の中


5. 秋刀魚
夢で見た秋刀魚の群れが新潟の水槽にいる夏の思い出


6.テーマ詠 秋
牡蠣食べたい。それ以外は特に言うことはない。


以上です。

寿司

 いまの家に引越す前に住んでいた町の、小さな寿司屋に久しぶりに行った。もう2年ぶりくらいかなー。子供が生まれて、引越して、しばらく行くことができなかったけれど、ようやく外食もできるようになった。今回は子供も連れて家族3人、子供がいるので予約して夕方の開店と同時に入店する。客の少ない時間帯で店もとてもよくしてくれたのでよかった。この日は光り物が酢締めしか置いていなかったけれど、どれも美味しい。
f:id:shoheiH:20160927004306j:plain
 以前のように日本酒を何合も飲んだりするような飲み方はできないけれど、また来たい。

映画『君の名は。』感想

映画『君の名は。』公式サイト
君の名は。』を見た。総合的には見てよかった、けれどこれが大ヒットと聞くと、そこまでかなぁ・・・という印象だが、それはおそらくこの映画がメインのターゲットとしているだろう中高生と自分の感覚がそれだけ乖離しているということなのかなー。いやホントにそうかなー。わかんねえなー。でも仮に自分が高校生だったとしても、1回1500円近くする料金を払ってこの映画を2回以上見るか?絶対に見ないと思った。高校生なんてなけなしの小遣いから60円のハンバーガーと水で腹を満たしてるような生活ですよ。しかし劇場には祝日と土曜に挟まれた金曜の午前10時40分開始の回というのに中高生が多かった。上映中も、映画の笑うポイントだったり、曲に合わせてノったりする周りの観客に気が散ってしまった(これは私が1曲も知らない所為でもあるが)ので、やはりDVDが出てから家で見ればよかったのかしら。町中が停電してるときにBGM流すな!やかましいわ!ストーリーについてはネットでは色々とツッコミが目立つけれど、そもそもファンタジーでオカルトな話なので超常現象や超能力を使ってありえないことが起きていてもそれほど気にはならなかった。とはいえどうしても引っかかってしまったのは、この話の一番のキモである「三葉とタキはどうやって糸守町を救ったのか」の一番肝心な部分が省略されてしまっていたことだった。変電所爆破からの防災無線ジャックによる校庭への避難という当初の計画は失敗し、結局三葉の身体に戻った三葉が父親である町長のもとに向かう訳だが、そこから先は丸々カットされて、エピローグで「偶然にも防災訓練が行われ・・・」とかなんとか書かれた週刊誌が映るのみ。おいおいそこが一番重要なポイントだろ!そこは観客が想像で補えってことなのか。寝たら入れ替わるとか、起きたら名前を都合よく忘れるとか、携帯のメモが目の前で消えていくとか、口噛み酒を飲んだら気合いで入れ替わりができるとか、そういうのはもう「そういう世界なんだからそういうもんだ」で受け入れてきたけど、まさか住民を避難させるのに超能力を使った訳じゃないんだろうからそこは見せてくれよ。見せてくれ〜!正直数年後に2人が会おうが会うまいがどうでもいいよ〜!そりゃあ会えないよりは会えた方がいいけど上手くいくかなんてわからんし、そりゃあ40とか50になって再会するよりまだ若いうちに再会できた方が可能性あるけどどっちでもでもいいよ〜!しかも同い年かと思ってたらタキの方が3つ上でこれ仮に付き合っても社会人の彼氏と大学生の彼女で時間合わなくてダメになるやつや〜!*1ゼネコン仕事キツそう〜!何が「地図に残る仕事」だ隕石なんか降らなくったって60年もすれば殆ど建て替えじゃ〜!三葉かわいい!四葉ちゃんもかわいい!山きれい!新宿ばっか!また新宿!なに?岐阜とか山梨の人は東京と言えばどうせ新宿西口の高層ビル群をイメージするでしょ?みたいなこと?変電所爆破したあとのテッシーの気持ち完全に「頼むから隕石落ちてくれ〜!」だよなー最後の台詞「君の名は」じゃなくて本当によかった〜!エンドロールまでずっと上石神井さんだと思ってました!以上です。

*1:逆?三葉の方が年上か

ナコルル問題に関する嘆願書のエントリーが修正されたようです。(前回の続き)

 前回の記事を公開してから程なく、記事の中で指摘した部分について元のエントリが修正されています。まだ嘆願書のご提出はされていなかったのでしょうか、ご修正が間に合いなによりです。あの内容のまま受け取っていたら先方も困惑していたことでしょうから。

 ところで元のエントリの追記という形でこちらのエントリが公開されています。
kutabirehateko.hateblo.jp


 なお、私及び私の投稿した前回のエントリに対しては、いまのところくたびれはてこさんから特にリアクションもなく、また上記のエントリでも直接の言及はないため、くたびれはてこさんが私のエントリを読んで頂けたのかはわかりません。
 また、「まとめて返信」というタイトルからもわかるように、私のエントリに向けて書かれたものではない表現も多数見受けられます。従って、これを前回の私のエントリに対する反論として扱うことはできないのですが、エントリの中に私が指摘した内容について一部書かれていることや、指摘した箇所が元のエントリでは修正されたという事実を踏まえ、ここから先はくたびれはてこさんが前回のエントリをお読みいただけたものと勝手に推定し、一人相撲で部分的補足をさせて頂きます。認識に誤りがあればご指摘ください。

ゲーム開発会社の住所について

SNKプレイモアの住所がない

ただのコピペ忘れ。なので本文中には吹田市と出てくる。

 これについては私の見落としでした。確かに本文中に"大阪府吹田市"との記述があります。失礼しました。

大阪市条例の引用方法について

大阪市ヘイトスピーチ対処に関する条例」が一部削除されている

削除ではなく一部引用。ただでさえ長いエントリーなので該当箇所だけ掲載。

 元のエントリでは、条例に該当するかどうか判断する上で最も重要な条文(ここでは第2条第1項(1)の「次のいずれかを目的として行われるものであること(ウについては、当該目的が明らかに認められるものであること)」)を、引用する際に書いていません。逆にここを記載してしまうと該当していないことが明らかであるため「該当箇所だけ掲載」とは言えません。
 このようにある部分を書かないことによって意味の変容を惹起する引用の仕方をもって私は「削除した」と判断しました。別に「一部引用した」でも構いませんが意味に大きな違いはないと言っていいでしょう。

 まあこれについてはしっかり引用する形で修正されているのでいいのですが、前述の通り条文が正しく引用されたことで、今回のケースがこの大阪市条例の規定に該当しないことがはっきりとわかるようになってしまいました。これでは先方も困ってしまいます。

 もう一度「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の条文を見てみましょう。

(定義)
第2条 この条例において「ヘイトスピーチ」とは、次に掲げる要件のいずれにも該当する表現活動をいう。
 (1) 次のいずれかを目的として行われるものであること(ウについては、当該目的が明らかに認められるものであること)
  ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること
  イ 特定人等の権利又は自由を制限すること
  ウ 特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること
 (2) 表現の内容又は表現活動の態様が次のいずれかに該当すること
  ア 特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること
  イ 特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人の相当数)に脅威を感じさせるものであること
 (3) 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること


大阪市市民の方へ 「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について

 上記の通り、条例ではヘイトスピーチの要件として、次のいずれかを目的として行われるものとしています。

  • ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること
  • イ 特定人等の権利又は自由を制限すること
  • ウ 特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること

 前回の記事でも指摘した通り、今回のケースでは上記ア~ウのいずれもその目的があったとは認められず、従って条例の定める「ヘイトスピーチ」にはあたらないと解することが妥当です。

 もちろん、

大阪市の条例に該当するからヘイトスピーチだ、該当しなければそうではないということではなく、定義を理解してもらうための参考例。

 はい。条例に該当しなければヘイトスピーチではないということではない、というのは当然です。

 ですが、くたびれはてこさんは、"「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の以下に該当する明白なヘイトスピーチ"と言うのですからそれを説明するべきでしょう。条文を貼り付けただけでは説明したことにはなりません。少なくとも今回のケースに第2条第1項(1)ア〜ウのいずれかの目的があったとする反論があると思います。
 でなければ該当しない条例をわざわざ参考例として持ってくるのは不自然です。

 繰り返しますが、大阪市の条例に該当しないからといってヘイトスピーチではないということにはなりません。ここは大阪市条例ではなく、よりふさわしい論拠を持ってくるのが適切だと私は思います。

ヘイトスピーチの法規制について

法を動かさなきゃならなくなったんだということが、今回の件でよくわかった。

 私もヘイトスピーチの法規制には賛成します。差別は絶対に許してはいけません。
 一方でヘイトスピーチ規制法の制定にあたっては、くたびれはてこさんが紹介されている『ヘイト・スピーチとは何か』(師岡康子著.2013.岩波書店)でも取り上げられている通り、その濫用の防止も考慮しなければなりません。

 濫用防止のための工夫を
 ラバト行動計画(2章1節参照)も、濫用の問題を指摘しつつ、最も憂慮しているのは、本来の意味でのヘイト・スピーチが訴追も処罰もされずにいることである(ラバト行動計画II-11)。そこで濫用を防ぎつつ適正な規制がなされる様、国内法で「差別」などの用語の明確な定義を行い、規制要件が過度に狭すぎたり、曖昧であったりしないよう求め、また、法律の内容のみならず、司法がその法律を適用する際、濫用を防ぎ、かつ適切な規制がなされるよう、具体的な注意事項を挙げて勧告している。
 人種差別撤廃委員会勧告三五も刑事制裁の正当性、公平性と必要性の原則に加えて、スピーチの内容と形態、発言者の地位、スピーチの目的、範囲、方法など様々な要素を検討して、規制する対象を正確に定めるよう勧告している。各国も濫用を防ぐ様々な取り組みを重ねており、その経験から学ぶべきであろう。


(168頁7行目-169頁2行目)ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

 日本では、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(いわゆるヘイトスピーチ規制法)が本年6月3日に施行されました。ここに条文を一部抜粋します。

(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。

 この法律では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」*1をこのように定義しており、事実上日本国内の出身者、つまりアイヌなど少数民族を対象から外していると読めるなど、まだまだ課題が残されています。この点においても議論が進んでいくことでしょう。


 一人相撲としては以上です。


ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

*1:普通にヘイトスピーチとすればいいのに、なんでわざわざわかりにくい用語を生み出すのか。法務省はホームページやパンフレットではヘイトスピーチと使っているクセに

「アイヌ民族尊重の呼びかけに関する嘆願書」の内容について

※下記くたびれはてこさんのエントリーは現在修正されています。
修正前のエントリー(魚拓)はこちら
【魚拓】株式会社SNKプレイモア ならびにナコルル声優生駒治美さんへ アイヌ民族尊重の呼びかけに関する嘆願書 - はてこはときどき外に出る
以上追記(2016.9.17)


kutabirehateko.hateblo.jp


 私は、くたびれはてこ (id:kutabirehateko)さんが、ゲーム「THE KING OF FIGHTERS XIV」を開発したメーカーに対し、ゲームのファンに対するマナーの喚起をするよう要求する嘆願書を送ることについて、(キャラクターを演じた声優に嘆願書を送ることは筋違いだと思いますが)反対ではありません。

 一般に、あるゲームについてマナーの悪い一部のユーザーに対して注意を呼び掛けることは、開発元あるいは運営側の義務とまでは言えなくても責任はあると思います。

 また、嘆願書自体は誰でも送ることができるので、(相手の業務を妨害しない限りは)送りたければどんどん送ればいいと思います。もっとも嘆願が叶うかどうかは別の話で、望み通りのアクションがなかったからといって相手を責める理由にはなりませんが。


 ところで上記エントリに書かれた「嘆願書」の内容に気になる箇所がありました。


 引用します。(引用している箇所をさらに引用しているのでわかりにくいですが、もとのエントリでは条例の条文が引用されています)

これは「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」の以下に該当する明白なヘイトスピーチです。

(筆者注:ここから引用)
 (1) 
  ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること
  ウ 特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること
 (2) 表現の内容又は表現活動の態様が次のいずれかに該当すること
  ア 特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること
  イ 特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人の相当数)に脅威を感じさせるものであること
 (3) 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること

大阪市市民の方へ 「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について
(筆者注:ここまで引用)

ご承知のように、この条例は全国で適用されるものではありません。しかしこのような条例が施行されるに至った異人種、異民族、その他マイノリティへの苛烈な攻撃で、疲弊し、消耗している点でアイヌは例外とは申せません。

 さて、くたびれはてこさんが、上記のように引用した「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」ですが、実際の条文は次のようになっています。

(定義)
第2条 この条例において「ヘイトスピーチ」とは、次に掲げる要件のいずれにも該当する表現活動をいう。
(1) 次のいずれかを目的として行われるものであること(ウについては、当該目的が明らかに認められるものであること)

  ア 人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団(以下「特定人等」という。)を社会から排除すること
  イ 特定人等の権利又は自由を制限すること
  ウ 特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること
 (2) 表現の内容又は表現活動の態様が次のいずれかに該当すること
  ア 特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること
  イ 特定人等(当該特定人等が集団であるときは、当該集団に属する個人の相当数)に脅威を感じさせるものであること
 (3) 不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること


※赤字は筆者
大阪市市民の方へ 「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について

 赤字にしたのはくたびれはてこさんが「嘆願書」の中に引用するにあたり削除した部分です。
 ですが削除した部分こそが重要で、この大阪市の条例では「ヘイトスピーチ」を定義する上で第2条第1項(1)ア~ウのいずれかを目的とするものとしています。つまりこれらいずれかの目的がなければ「ヘイトスピーチ」にはあたらないとしています。

 今回の騒動で問題となった

アイヌ殺す」

 という発言は、実在するアイヌ民族の人々に向けられたものではなく、ゲームのキャラクターであるナコルル(及びそのキャラクターを使用するプレーヤー、または鷹)に向けられたものであったことは明らかであり、アイヌの人々を"社会から排除すること"や、彼らへの"憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること"が目的であったとは言えません。
 もちろんあの発言は非常に強い暴力的なもので、現実に生きる誰かを傷つける可能性のある、想像力を欠いたものであることは言うまでもなく、許されないものだということに異論はありません。
 ですがあれを「ヘイトスピーチ」だとするのは無理があります。さらに「ヘイトスピーチ」と認定した上で反ヘイトスピーチ、反差別の文脈で糾弾するのはやや行き過ぎの感じがします。(当初の発言のみを問題にしており、その後の対応や周辺のプレイヤーたちの発言までは仔細に追えていないので、仮にその中で差別的な言動があったとすればそれは別です)


 また、そもそもこの「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」はヘイトスピーチと思われる事案が発生した時に大阪市がどのように対処すべきかを定めたものであって、一般的にヘイトスピーチを定義するものではないんですよね。
 しかもゲームの開発元である株式会社SNKプレイモアの所在地は大阪府吹田市江坂町一丁目16番17号ですからね。(なぜか上記のエントリではこの会社の住所だけ書かれていませんが)*1

 まあもちろんくたびれはてこさんはそんなことは先刻ご承知のことと思います。というのも日本にはヘイトスピーチを明確に定義した法律がないですし、何がヘイトスピーチにあたるのかはっきりとした定義が無い状態ですので、わかりやすい例として大阪市の条例を持ち出したんだろうということは想像がつきます。

 ですがそのような状況で誰かの発言をヘイトスピーチと認定し、また認定した上で叩くのであれば、相当の慎重さが求められるべきと私は思います。


kutabirehateko.hateblo.jp

 くたびれはてこさんは、こちらの記事でも当該発言をヘイトスピーチと認定していますが、記事の中で

アイヌ殺す」はヘイトスピーチ

 という見出しの下、それぞれの立場のツイートを引用し中立的な立場をとっているものの、結局あの発言がヘイトスピーチであることを論証していません。まさか「傷ついた人がいるのだから問答無用で差別だ」というわけではないのでしょう。


 まとめると、

  • 例の発言は暴力的で、Twitterのような人目につくところで発言することは不適切
  • だが、本人に差別意識や差別する目的があったとまでは言えず、大阪市の条例が定義する「ヘイトスピーチ」にはあたらない
  • 嘆願書は好きにすれば

 以上です。

追記しました。(2016.9.17)

shohei.hatenadiary.jp

*1:追記:本文中に"大阪府吹田市"との記述があるとのご指摘を頂きました。訂正します。

「間違えたら謝ろう」はわかっているけど簡単ではない

 中学のときの国語の教師の話をします。わりと入学したばかりの頃、たしか6月くらいだったと思うんだけど日帰りの修学旅行のような行事で東京に行くことがあった。新幹線で。それで駅前の広場に朝の7時に集合することになっていて、俺が着いたのがギリギリで既に学年のほとんど全員が集まっていた。もちろんその時は学年全員の顔なんて知らないからたぶん集まっていたんだろうという記憶でしかないんだけど。それで俺が着いたのがギリギリだったのね、そしたらそれを見つけた国語の教師が「お前!遅刻だぞ!何考えてるんだ!」っていきなり怒鳴りつけるもんだから「えっ?!」って時計を見たらまだ7時ではない。確かに7時ギリギリではあるけど7時ではない。だから「まだ7時じゃないですよ」って言っても「ふざけるな!遅刻だ遅刻!」てもう話にならないというか一度拳を振り上げたもんだから学年全員が見てる手前もうどうしようもない。なんとかしてこの遅刻した生徒が悪いことにしないと自分が収まらないと思ったのかもう認めるものも認められない。いや確かにギリギリはギリギリだけどさ、6時57分とかだったのよ。遅刻じゃないじゃん。俺がたまたま修学旅行だからってんでしてた腕時計がカシオのGショックでもちろん学校には付けていかないけど修学旅行だからしていたカシオのGショックってカシオってつけなくてもGショックはカシオだろ、それと駅前広場の時計どちらも6時57分だったからこれはもう日本中6時57分でしょ。その瞬間「あっ、こいつミスったな」って思うよね、中1だから。こいつミスったなって思ったときの中1はバカだよ。だから中1に勝とうと思ったらわざとちょっとしたミスをしてみたらいいと思うんだけど、でもってこっちも中1だから、いまなら適当にすいませんとかなんとか言ってその場を収めるのも吝かではないけども、もちろんその場合でも「まだ集合時間前ではありますがみんなを待たせてしまったかもしれません」とかは言うかもしれないけど当時は中1だから、自分に非がないと思ったら引かないじゃないですか。あっこれは勝てると思ったら降りないじゃないですかバカだから。そうしたらもう次の台詞は「いま何時ですか?」しかないよね。すると国語の教師も「6時57分です」とは言えないよねさすがに。言ったら確定しちゃうから。負けが。そこで勝ち負けが出てくるのが本当にバカだと思うんだけど。そこは教師だから、やっぱり子供の扱いに慣れてるというか、ちゃんと勝ち負けを確定させない。悪く言えば負けを認めない。苦し紛れに出てきたのが「5分前行動なら遅刻だ!」でした。

 仕事相手と13時に自分の会社で会う約束してるとします。そこで12時50分とか55分に来るやつなんなの?もっと酷いやつだと12時40分に来るやつもいるけどなんなの?こっちはまだ昼飯食って席に戻ってからネットしたり新聞読んだり小説読んだり昼寝したり歯磨いたりボーっとしたりしてるんだよ。あるいはなにもしてないんだよ。なにもしてないをしてるんだよ。早けりゃいいってもんじゃないだろ。遅刻したくないのはわかる。だからって早くくるなよ。早く着いたならその辺うろうろしてろ。まだ来るな。早く来てますアピールすんじゃねえ。時間潰せ。時間潰して13時00分30秒に来い。俺はお前と13時に約束したんであって12時55分に約束したわけじゃない。5分前はまだお前の時間じゃない。13時からがお前の時間だ。

 個人的に5分前行動をポリシーにするのは構わないんですけどそれは自分ルールであって他人には他人のルールがある。他人は5分前行動をしているとは限らないわけでそこには集合時間の7時しかないにもかかわらず遅刻だ!と言ってしまったのはまあミスなわけで。だから今回は完全に国語教師のミスなんですけど、じゃあ例えば学校で全校生徒に普段から5分前行動を心がけましょうって言われてたとする。6月の学級目標は「5分前行動をする」だったとします。だとしたらどうでしょう。クラスとしてはやっぱり5分前行動がよしとされていることになります。例え修学旅行の前日に、集合時間は7時です。と言われていたとしても、私が学級目標にコミットするかしないかは別としても、そのクラスの一員である以上、5分前行動をすることが5分前行動をしないよりもいいbehaviorであると認められた社会がそこにある。事実私を除いた多くの生徒達は5分前行動をしてそこに集合しているのです。さあ、6時57分に登場した少年は悪いのでしょうか悪くないのでしょうか。色々な考え方はあるにせよ、5分前行動してほしかったという教師の気持ちもわからないでもない(実際にはそんな学級目標など無かったけどもしもの話として)。でもそこで始めから「遅刻だ!ふざけるな!」と言う必要はあったでしょうか。「ギリギリですよ、もう少しで遅刻になったかもしれないですよ」というやり方もあったんじゃねえかと思うのです。少年は5分前行動を破るつもりは別になかったのです。学級目標を知らなかったのかもしれません。知らなかったことはもしかしたら褒められるべきことではないかもしれません。しかし、いきなり殴りかかられるほどのことでしょうか。殴らなければ「そうですね、気をつけます」で済んだかもしれない。「えっ、いま何時ですか?」「・・・・・・間に合ったからいいものの5分前行動なら遅刻だ!」「5分前行動じゃないし遅刻じゃねえよ」とはならなかっただろう。だからいきなり強く殴りかかるのはやめようという話なのだけど、人間だから間違えて殴りかかることもあるだろう。いや殴りかかるのはあってはいけないけど、間違えて「お前は遅刻だ!」と弾劾断罪糾弾河岸段丘することはあり得る、私も貴方もあり得るのだから、間違えたときは素直に謝ろう。「えっ、いま何時ですか?」「ん?ああまだ57分だったな。すまない」と謝ろう。そういう大人に私はなりたい。そして知らずに、あるいは不注意で人を怒らせてしまったら、素直に謝れる人になりたい。と思ったのでした。

 けれどこのように思っている私であっても、頭ごなしに殴られたら、咄嗟に身構えてしまうし、自分に理があると思えば素直に謝れる自信が無い。相手の言い分を良く聞けば相手に理があるようなことであっても、咄嗟に受け入れることは難しい。それは頭ごなしに殴ってくるやつを条件反射的に受け入れていたらそいつは増長し毎日殴ってくるようになることを経験的にわかっているから。人間は自分の身を守るようにできている生き物だから、いきなり殴りかかられれば反射的に防御はするし反撃もする。だからヒトを簡単に殴ってはいけないのだけれど、ヒトは謝ることもできる、ということを思い出したい。