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登頂しなくても登山は楽しいか

文章

2年前に始めた山登りですが、今年はまだ一度も山に登っていません。こう毎日天気がいいとどこか高い山に登って山頂で景色を眺めながらコーヒーでも飲みたくなるものですが、引っ越しやら何やらでしばらく山には行けそうもないので、今日は部屋で山の事を考えていました。


山の良いところはなんと言っても空気の気持ち良さ。草や葉の香り、鳥のさえずり、湧き水の流れる音、湿った土の匂い、時折吹きつける乾燥した風。

綺麗な景色も良い(天気が良ければ)。山頂で運良く天候に恵まれて眺望が開けた時は本当に気持ちがいいものです。関東近郊の山では山頂から富士山が見られるところも多いですし、また景色を眺めながらの食事や、コーヒーは格別で、山登りの大きな楽しみのひとつでもあります。(富士山に登った時は天候不順で何も見えませんでしたが)


私は山に登るとき、綿密な計画を立てます。旅行に行くときはほとんど計画など立てたこともなく、むしろそうすべきとさえ思っているくらいですが、山登りにおいては家を出てから帰るまで分刻みでスケジュールを作成しています。あまり計画を立てることを好まない私ですが、むしろこの計画段階がまあまあ楽しかったりもして、これは私にとって意外な発見でした。

ただそうせざるを得ない理由もあります。私は車を持ってないので山へは電車で行くことが多いんですが、大抵の山は自宅のある都内から遠く、更に登山口までは駅からバスで40分以上掛かるのが当たり前、そしてバスを1本逃すと次は1時間後で周囲にはタクシーもいない。夜間に山で行動するのは危険なのでなるべく朝早く山に入りたいと考えると、時間にはシビアになる他ありません。

計画を立てるのは安全確実に登頂するためでもあります。ルートを決め、ペースを守り、適宜休憩をとり、予定通り登頂し、安全に下山する。無理な計画は立てず、無理な行動はしません。危険な時は引き返す心積もりはありますが、そうでなければ余計なことは考えずただ山頂を目指します。登頂することこそが登山だからです。


山登りの経験が浅い私にとって山を登る一番の目的は登頂することでした。山登りとは山頂を踏むことと同義で何々山に登ったと言えばそれは何々山頂に行ってきたことを意味します。

しかし、本当にそれでいいのだろうかと考えることがあります。山の魅力とは山頂だけではないはずです。前述の通り、山の魅力は山の空気、風、音を感じ、自然の中に身を置くことにこそあるのではないか。いまの自分はまるでスタンプラリーのように、山に登りたいのではなく山に登ったという事実を作りたいだけのように(海外に行きたいのではなく、海外に行ったことがあると誰かに言えるようにしておきたいから海外旅行に行くように)登山をしているのではないか。過程にある本当に見るべきものを見過ごしてしまっているのではないかと思うときがあります。


しかし、山頂を目指さないルートを作ろうとすればそれはそれで難しいもので、文字通り山場があった方が道程が盛り上がるし、何を目的に山に入るのか見失いがちになってしまう。山小屋に泊まることも、山の中での食事も、楽しみのひとつではあるけれど、やはり山頂があってこそのものだといまの私には思えてしまう。

山頂に行っても行かなくても山登りは楽しい

これはもうちょっと時間をかけて取り組みたいテーマです。それにはまずは山ほど山を登らなくてはいけないかもしれませんね。おしまい。