鏡の匣の中のマリオネット

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽 (講談社ノベルス)

匣の中の失楽」を読み終わり、どちらが答えなのか、答えがあるのかないのか、それとも端から答えがあってもなくてもどちらでもいいやという小説なのか、なんとも判断がつかない。一寸先は五里霧中な曖昧模糊とした世界の中を一歩一歩ヨチヨチヨチヨチ歩いていると、遠くに微かな光が見えたと思ったら鏡にぶつかり、振り返るとそこに立ちはだかる別の鏡に映った自分の後ろ頭を鏡越しに眺めていた。小説の内容についは詳しい解説が既に各所にあるだろうからなるべく本の内容には触れずに感想を書いておきたい心境である。とはいえ例によってネタバレ注意です。ただネタバレというネタバレはないというか、こうこうこういう小説だと聞いた上で読んでも楽しめる、読書体験を損なわない小説じゃないだろうか。

この小説読むにあたり「メタミステリ」であるという予備知識だけ仕入れていたものの「メタミステリ」とは何かという知識はなかった。メタっていうくらいだから小説自体に仕掛けがあるのかな?小説読んでると思ったら実は全部犯人の妄想だったりするのかな?という状態だった。そうして読んでいくと、まあ純粋に事件の謎を解こうという読み方にはならない。一応事件は起きるけど、これは最後まで読んでみないことにはどう扱ったもんかわからんぞっていうつもりで読むことになる。読み切ってようやく謎に取りかかれるという意味では、読み終わらなければ読み始めることができないとも言える。

一応断っておくがこの小説は第一章から第五章にプロローグとエピローグを加えた7章で構成されているというのは目次を読めばわかるのでネタバレには当たらないはずである。第一章で事件が起き、第二章で「おっ来たか?」、第三章で「またかまたか?」第四章以下同文。これだけではわからないと思うが、わからなさという点ではこういう小説である。この感覚はあれに似ている、同じ図形を無数に並べた柄を作りたいときやエクセルで同じ行を沢山増やしたいときに、まず一つ作ってそれをコピペし、次にそのコピペしたものと元を合わせて2つをまとめてコピペし、以降4つ、8つ、とコピペの無限増殖をしていく作業に似ている。あるいはロマネスクっていう野菜がある、パンクに目覚めたブロッコリーのヘアスタイルみたいな、複雑な釈迦頭のような野菜だが、あのどこまでも続いていく無限のフラクタル構造にご案内された時の気分に似ている。


私は双葉社の文庫版で読んだんだけど文庫の割りに分厚くて魍魎の匣くらいの厚さがある。厚いので文庫でも1200円くらいと高い。高いから私は図書館で借りて読みました。本が高くて読まないくらいなら図書館に本を借りに来たっていいんだよ。以上です。