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「レシート要りません」とはまだ言ってない

文章

 コンビニでお会計するとレシートくれるじゃないですか。ちょっとでも気を抜いてるとすかさずくれるじゃないですか。本当は貰いたくないんですけど、ゴミになるから。だから貰ってしまったらすぐにでも捨てたい。レジの上にレシート用のゴミ箱があればすぐに捨てます。無ければ仕方がないので持ち帰って捨てます。

 でも本当は捨てるのさえ煩わしいので貰いたくないんですよ。だから「レシート要りますか?」って聞いてくれるコンビニなら要りませんて答えるし、聞かれなければ自分から「あっ、レシート要りません」て言うようにしてるんですけど、たまにというか会社の近くのコンビニにお爺さんの店員がいるんですがーーその店員はクレジットカードのことをクレジと呼ぶーーレシート要りますか? の確認もなしに、こちらが「レシート要りません」を言う暇も隙も与えずに間髪入れずにレジ袋にレシートを突っ込んでくることがあって、そうされるとレジの前に突っ立ってレジ袋の中からわざわざレシート探し出してレジのゴミ箱に入れるわけにもいかないじゃないですか。それじゃあ店員に対するあてつけになってしまうので、不本意ながらレシートの入った袋を受け取って、朝から嫌な気分になりました。

 反対にこちらが「レシート要りません」も何も言う前に、こちらに何も確認もせずにレシートをカウンターの内側のゴミ箱に捨てる店員に対しては、
「レシート下さい」って言いたくなるよね。なに勝手に捨ててんだよ。決めるなよ。確かに要らないけど俺が要らないっていうまでゴミだと決めるなよ。確認しろよ。割り箸も勝手に入れんなよ。それもゴミだよ。あーもう絶対言う、絶対レシート下さいって言う。レシートもらってコンビニ出て外のゴミ箱に速攻で捨てる。

 こないだラーメン食いに行ったんですよ。結構美味しいラーメン屋が近所にあって俺もよく行くお店なんですけど、あんまり有名じゃないのかそれとも俺の行く時間帯がたまたまそうなのか満席になってるところを見たことがない。それでこないだ年明けて初めて食べに行ったんですが、いつものようにラーメン食べて、さあ帰ろうと思ってお会計してもらったら店長に、
「今年もよろしくお願いします!」
って言われて(やめてくれよ……)と思った。なんならもう二度と行かねえくらいには思いました。

 そういうんじゃないんだよ。そういうのは求めてない。いままで会話したことなんかなかったじゃん。なんで急に気さくな店長の感じ出して来たの? 正月だからいいと思ったの? 俺は別に人柄でラーメン食ってるわけじゃないし、確かに何度も来てるけどいつでも「この味俺の好みじゃねえな」って思ったら次はもう無いぞってくらいの気持ちは常に持って来てるよ。

 「よく来るいつもの客だ」って認識されるのは構わないけど、それは事実だから仕方ない、その認識を客に開示しないで欲しいんですよ。こちらはあくまで"大勢の客の一人"で居たいんですよ。店員対客で居たいのであって、店員のあなたと客のわたしにはなりたくないんですよ。店員がバックヤードで客の一人ひとりにニックネームを付けるのとか全然いいんですけど、(この人はレシート要らない人だ)って記憶するのも全然いいんですけど、口に出してニックネームで呼んだらヤバいじゃないですか。ルール違反じゃないですか。

「お会計756円になります」
「スイカで」
「金額ご確認のうえタッチお願いします」
ピッ
(あっこの人いつものレシート要らない人だ!)
「あ、レシ…」
グシャッ

 やっぱりルール違反だと思うんですよ。

 誤解しないで欲しいのは言いたいのは「察してくれ」ってことじゃなくて、むしろ逆で「察するな」なんです。察するな。マニュアル通りにやって下さい。じゃがいもだと思って接客して下さい。

 ハンバーガー40個買おうとしたら店員に「店内でお召し上がりですか?」って聞かれて今の若いもんはなんでもマニュアル対応しかできねえのか!操りつられてんのか!って昨年あたり梅沢富美男が言ってましたけど、操りつられはたぶん今年も既に100回は言ってると思うんですけど、件のマクドナルドだかモスバーガーの店員に対して気が利かないとか察することができないとか柔軟な対応ができないとか言うことは簡単なんですが、そういう愚直な対応が求められる場所もやっぱりあると思うんだよな。
 それにもしかしたらこの店員は以前別のハンバーガー40個頼んだ客に「お持ち帰り用の袋にお包みします」って気を利かせたら「持ち帰りじゃねえよ中で食べるんだよ。確認せずに持ち帰りだって決め付けるなよ。ていうか本当は持ち帰りのつもりだったけどやっぱり中で食べることに変えた。いま変えた。あーあ1人で40個も食べられるかなー。食べきれなかったらゴミになっちゃうなー。ゴミになったら勿体ないなー」
と言われた経験があってそれ以来気を利かせることをやめたのかもしれない。

 最近近所にクラフトビール専門のバーがオープンして、早速行ってみたんですけど平日だったからかガラガラだったんですよ。俺含めて1人か2人くらい。俺含めて1人ってなんだよ。もう1人の客0か1って点滅してるよ。
 そんな雰囲気がよくて、次に土曜に行ってみたらほぼ満員で、うるさくて、まあ仕方ないかあと思って今度また平日に行ったらまたガラガラなの。だからこれからは平日に行こうと思って何回か通ったらこないだマスターに、
「いつもありがとうございます」
って言われて、でもこれは嫌じゃなかったんだよなあ。

 ラーメン屋とバーの違いってなんだろう。どちらもカウンターに座ります。俺はいつも1人で行くので誰かと会話をするわけでもなく、もちろん店員とも他の客とも会話はしません。黙々と麺を啜る、酒を飲む、またはスープを飲むだけです。違いは何かって言ったらやはり「飯か酒か」なんでしょう。ここであまりに有名なあの台詞を引用します。

モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず
自由で なんというか
救われてなきゃあ ダメなんだ

独りで静かで
豊かで……

井之頭五郎 (『孤独のグルメ』より)

 独りで食べる時は誰の邪魔もいらないんですよ。ちなみに井之頭五郎は酒は飲まないんですけどね。

 『孤独のグルメ』には井之頭五郎が勝手に期待して、勝手にその期待が裏切られてガッカリするというシーンがよく登場します。期待を裏切られるおかしさとか、大の大人がそれに一喜一憂する滑稽さを描いた漫画です。
 レシートいるいらないとか、店員が急に親しげに話しかけて来たとか、正に勝手に期待して裏切られたみたいなものなんですが、それ自体は当事者にとっては面白くない経験でも、孤独のグルメのように俯瞰して見ればそう面白くないことでもないなと思ったりもする。

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