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強風

文章

 昨日のように暖かく風の強い日はつい外出をしたくなる。理由はお察しの通りであろう。朝からの強風は益々勢いを増し近所の鉄塔は風切り音を轟かせ、上空は雲の流れ早く時折差す陽もまたすぐに雲に覆われると思いきやその雲も流れて強い陽射しが庭に注ぐ。昼前には雨も混じり始めた山のような天候だった。
 北関東の若者が集うとある商業施設に行こうと電車に乗り、駅から施設までを地上2階レベルで繋ぐペデストリアンデッキを歩いているといきなり後ろから声がした。
「あ、綺麗なお姉さん!」
「綺麗なお姉さん! カッコいー!!」
 声に思わず振り向く。それは声がしたから振り向いたので他意はない。あるいは危険があってはいけないという思いやりの心からである。決して綺麗なお姉さんに釣られたわけではない。
 デッキ上に設置された商業施設内のシネコンで上映されている映画のポスターが入った箱形の看板、その前に5歳くらいの男の子2人組が、手にはバレーボールの応援に使う細長い風船のようなものを持ちながら、ポスターのある一点を指差している。それはプリキュアだった。
 彼らが指差すその絵の中心に描かれたプリキュアは、装飾の付いた派手な衣装に包まれ、他のプリキュア達を従えていて強そうで確かにカッコいい。私は5歳の男の子の中で「綺麗なお姉さん」と「カッコいい」とが素直に繋がるところにいいようのない温かみを感じた。
 強風に困っている綺麗なお姉さんはどこにもいなかった。私は10秒前の自分を愧じた。

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