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 大学の年に一度のウェルカムパーティーに行く。友人二人と一緒に来ていた。始まる前に何人かと名刺交換をした。やがて始まるが、つまらないので帰る。
 高級マンションの4階に行くとそこでもパーティーをやっている。マンションのエレベーターはセキュリティカードをかざさないとフロアに停止しないシステムで、4階はこの一部屋しかない。主催は部屋の持ち主の老婆だった。私は老婆が友人と東京マラソンに出る際に運転手をしたことがあるが、老婆は私を覚えていない。こんなに食べ物も飲み物もあって参加費はいくらなのかと聞くと数百円だと言われる。
 さっきのパーティーにいた人達もやがて部屋に入ってきて、結局もとと変わらなくなってしまった。
 パーティーも終わりに近づき、食べるものも飲むものもないので帰る。深夜の街を警察に見つからないように自転車で暴走した。
2016.4.26

 マンションの外廊下で刃物を持った派遣社員の松本さんに詰め寄られる。
「私のこといつも見てたの知ってるんですから。気持ち悪い」
 松本さんはナイフの刃先をこちらに向けて近づいてくる。果物ナイフだった。
「いやいや見てないですよ」
「見てたじゃないですか」
 周りの部屋のドアから住人が顔を出してこちらの様子を伺っている。
 松本さんがナイフを振り回す。それを避けながら松本さんを突き飛ばす。彼女が後ろによろめく。次の瞬間、隣の部屋のドアが開いたと思うと刺股が飛び出してきて彼女の身体を廊下の手摺壁に押さえつけた。
2016.4.20

 家に帰ると冷凍した人間の脚が送られてきて、冷凍庫に入らないのでどうしたものかと困る。保冷バッグに入れてから大きな肩掛けバッグに入れて街を歩く。周囲の人間を見渡し、この中で鞄の中に人間の脚を入れているのは俺だけだろうなと優越感に浸る。

 宝くじに当たった。手元の宝くじと新聞の当選番号を見比べて確かめると、10桁以上ある数字の全てが一致した1等だった。当選金額は1000万円。それから数日は1000万円をどうやって使おうか考えて過ごした。今すぐに欲しいものもないのだから取り敢えず半分は貯金して半分は株や投資信託を買うことにしよう、住宅ローンを返済するのは税額控除がもったいないからやめよう、などと考えていると目が覚めた。
 目が覚めるとどうもあれは夢だったかのように思えてきたのはその時点ではまだ当選したことを信じきっていたからで、あれは夢ではないと思っていた。数秒前まで綿密な投資計画を考えていた男がすぐに現実を受け入れられる筈もなかった。仕方がないので抽斗から宝くじを引っぱり出してきて新聞の当選番号欄と比べて見るともちろん当選はしていなかった。なんだ夢だったのか。ガッカリして外れ券は誰かにあげてしまった。そこは郵便局のカウンターのような所で向かいに職員の男が座っており、テーブルの上には宝くじの外れ券が束になって乗っている。その男に外れ券を渡した。
「この宝くじの束はどうするんですか?」
「これはお客さんに配るんですよ。サービスのようなものです」
 男は束を数え始めた。
「でももう当選発表終わってますよね。だからみんな外れですよね。一の位が揃うと300円が貰える、それすらももう残ってないんじゃないですか」
「そうですね。ですが探す楽しみがありますから。確かめる楽しみというんでしょうか。新聞の当選番号欄と、比べられる宝くじがあればいいんです。当たりかどうかは関係ないといってはなんですが、数字を見比べるのが目的ですから当たり外れは二の次です。彼らは暇なんですよ」
「彼ら?」
「うちのお客さんです」
 男はテーブルの上の大きな束を客に配りやすい小さな束に仕分けて並べている。そこで目が覚めた。
 起きてからよくよく考えてみると、私は宝くじを買ったことなんか一度もなかった。
2016.4.19

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