牡蠣が食えたら

#牡蠣食えば のサブブログにしました。

由伸

 Facebookを見ていると私の知らない名前の人物が「結婚式を挙げました!」と報告しているのを見つけた。私は自分に関係のない人の投稿などがアクシデントで流れてくると片っ端からブロックしているので、基本的に知らない人の投稿がタイムライン上に表示されることはない。なので、お前誰だよ!と思い、その忌々しい結婚報告を詳しく見てみると、それは巨人の高橋由伸に似ているので皆から由伸と呼ばれていた中学の同級生、高橋だった。

 その同級生(以下、由伸という)は既にFacebookのおともだちだったので私のタイムラインに登場したのであったが、苗字が高橋ではなかったのでパッと見わからなかったのだ。ついでに写真も投稿されていたので由伸の結婚相手の顔を興味本位で拝見した。もちろんそれは知らない人の顔だった。中学時代の高橋由伸と言えばその甘いマスクに慶応大学卒というブランド、そしてなにより天才と呼ばれたバッティングで大変な人気があったが、チームは毎年のように他チームから大型選手を買ってくる上に肝心のその選手は活躍できず、他チームのファンからは非常に嫌われていた。私の地元はプロ野球チームが無いので地元にプロ野球チームがある人が羨ましいが、地元にプロ野球チームが無い子供は巨人ファンになる確率が高いという個人的調べがある。私の地元も例に漏れず、自動的に巨人ファンになる子供が多かった。それから巨人はたまに二軍が市営球場に来て試合をやってくれる。相手はライオンズの二軍だった。人間は自分の目で見たものを好きになる習性があるので、神宮球場の周りで練習後のヤクルトの選手をいつも見ている東京の小学生と違って日頃プロ野球を間近で見る機会のない田舎の子供にとってはそれだけで巨人ファンになる理由になったが、けれどもその年は私の周りでもアンチ巨人が多かった。

 しかし由伸は中学の頃からモテて、付き合う相手も取っ替え引っ換え、羨ましい限りだった。卒業後もその勢いは増すばかりでとにかくいつも相手がいたような記憶がある。しかしいつも付き合う相手は決まって中学の同級生だった。20代も半ばに差し掛かるころ、ある同級生から聞くと、

「由伸いま松井と付き合ってるらしいよ」
「えっ?上原は?」
「それはもうだいぶ前に別れたよ。上原と別れて清原と付き合って、それでまた別れて松井と付き合ってるって」
「マジか清原もかよ、知らなかった」

 こんな会話が日常茶飯事に繰り広げられる。あれ?松井と付き合うの何回目だっけ?阿部とはもう付き合ってたっけ?もはやどうなっているのかわからない。上原も清原も松井も阿部も同じ中学のサッカー部。由伸が中学時代に付き合っていた何人かの相手も全てサッカー部だった。由伸はどうやらサッカー部が好きなのか、あるいはコレクター気質なのか、サッカー部出身者が次々と実績解除されていった。そんな由伸が結婚相手に選んだのはサッカー部出身者でもなく、同じ中学出身の同級生でもない普通の一般男性だったので、とても温かい気持ちになりました。