牡蠣が食えたら

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ズントコベロンチョ

 土曜日に放送された世にも奇妙な物語傑作選でズントコベロンチョを見た。

 草刈正雄扮するパルプフィクションのときのジョントラボルタ風のサラリーマンが「俺に知らないことはない」と豪語するも、ズントコベロンチョという単語の意味がわからず、かといって誰かに聞くこともできず、しまいにはズンベロプロジェクトのリーダーに任命されてさあ大変という話だが、マクガフィンのズントコベロンチョはともかくその他のことについても実は草刈は無知なんじゃないかと思えた。

 例えば、
「インテリジェントビルのコンテンポラリーなニーズにとってアメニティとしてのアトリウムは欠かせません」
 という台詞がある。会議室のスクリーンに映し出されたスライドの前に立ち草刈正雄がプレゼンをしている。資料を読んだ出席者からは「このアトリウムってなんですか?」と質問があるが草刈正雄は「そんなことも知らないのか、説明する気にもならない。勉強不足だよ君は」と退ける。出席者たちはポカーンとしている。

 ところで91年当時のサラリーマン達はこのような横文字だらけの会話をしていたのか、それとも当時の感覚でも可笑しかったのか気になったが、今でもこういう喋り方をする人はいるのでその辺は変わってないのかもしれない。関係ないがblogでもやたらと横文字を多用したりcoffeeやwineやbeerなど外来語・英単語を必ずalphabetで記述するbloggerがいて笑ってしまう。固有名詞を正確に記述したい場合以外には外来語はカタカナで書いた方がsmartだと思う。

 さっきの台詞に戻って草刈の職業を考える。インテリジェントビル、アトリウムという言葉から推測するに草刈の仕事はオフィスビルの開発に関係ある設計事務所、ゼネコン、不動産デベロッパーなどが思い浮かぶ。
 社内では専務にも一目置かれるそれなりのポジションにいるらしく、家庭では妻と娘がいてリビングには暖炉がある。いい店をいくつも知っていて、社内の女子社員と毎晩のようにデートをしたり、ブランド物のバッグを贈っていることなどからも、収入はそれなりに高いものと思われる。
 当時の日本はバブル景気で不動産価格は上昇を続けていた。三菱地所ロックフェラーセンターを買った時代。草刈は羽振りの良かった不動産会社の社員だろうか。

 しかし同僚たちを見るとどうか。アトリウムという単語すら知らない。ズンベロは詳しいみたいだが。さらにもう一度草刈民代の台詞をよく聞くと「アメニティとしてのアトリウムが〜」と言っているが、アトリウムとはエントランスホールなどによく用いられる吹抜けのような大空間のことだが、それがアメニティつまり快適性に資するかといえばそうとも言えない。なぜなら大空間では空調の効率が悪く、音は響いてうるさいし、高い天井の照明の交換は高所作業車を使用したり足場を組んだりと費用がかかりビルオーナーにとって必ずしも快適とは言えない。当時はLED照明も無く蛍光灯かハロゲンランプだろうからしょっちゅう交換しないといけない。
 そう考えると草刈正雄もよくわからずにあの台詞を言っていたのだろう。もちろん草刈正雄本人がわからずにという意味ではなく、草刈が演じる役の人物としてはわからずにという意味で。建築関係の仕事に就いている可能性は消えた。
 あとは考えられるとすれば本社ビルの建設プロジェクトを任された総務担当である場合。おそらく設計事務所などからの受け売りで、貰った提案書をそのまま喋っていたのだ。総務担当であれば本業と関係なさそうなズントコベロンチョプロジェクトチームリーダーに任命されるのもありうべき話だ。